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再び、あなたへ
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
哲学に興味をもっていただけたでしょうか。
哲学議論がもたらす思考のうねりを感じていただけましたか。
私が哲学の世界に入門して、二十五年ほどが経とうとしています。その月日の中で、
•哲学とは、私にとって、何であったのか
•哲学は私に何を与えてくれたのか
これらのことを振り返りながらの執筆になりました。私というひとつの窓を通して、あなたにも哲学の世界をのぞいてもらいました。私が二十五年の哲学人生を通して体験し、考えてきたもの、そして身につけてきた「自分で考える術」をあなたにもお裾分けできれば嬉しいです。
哲学の世界に飛び込もう
哲学の世界へ入門するためには、年齢は問われません。
誰でも
いつでも
どこからでも
哲学をはじめてよいのです。
私は、八年もかけて博士論文を準備し、三十八歳で博士号を取得しました。それは、亀のような歩みでした。
宗教における真理とは何か、宗教の言葉の意味とは何か。この問題を最初に抱いたのが二十歳のときです。それから十八年ものあいだ、私はひとつの問題を考え、そして、今も考え続けています。
東京スカイツリーに上った人だけが知る世界
考えてどうなるの?
最後に、こんな問いにも、私なりにお答えしておきます。
たとえば、東京スカイツリーに上ってどうなるの? という問いがあります。東京スカイツリーに上っても、これと言って何かの役に立つことはないでしょう。でも、上った人にしか見えない景色と感動というものはあると思うのです。考えてどうなるの? という問いもこのことと同様かもしれません。
考えた人にしか見えない景色と感動は、やはりあるはずです。
未来の扉をノックする
そして、考えることで強くなれます。
本書で何度も述べましたが、二〇一〇年、三十三歳のときに、私は躁うつを発症しました。この病により、ここ十数年の人生において、私は何度も心を倒しそうになりました。しかし、私自身、悩んで終わりではなく、もがき苦しみながらも、前を向こうと考え、奮闘してきたのだな、と本書の執筆を通して自分自身で確認することができました。
悩むのではなく、考えることで、私たちの置かれている困難な状況を打開しようとする。
考えること、
それは、未来の扉をノックすることです。
「素朴な問い」を大切に
私たちの生きるこの世界の、この部分は一体どうなっているのだろう?
考えるために、日常生活の半径数メートルで湧くこんな「素朴な問い」を大切にしてください。問いを抱くことで、その問いが窓となり、世界の見え方は確実に変わります。ですから、たとえ周囲に同じ問いを考えている人が誰もいなくても、その「素朴な問い」をあなたの中で大事に温め続けてください。
長い人類の歴史(本書では特に哲学史)において、あなたと同じ問いを考えている誰かは必ずいるはずです。その誰かを見つけることができたなら、今度はその誰かとゆっくり対話しながら、考えてみてください。それが、哲学書を読むということです。
哲学書を読み終えたなら、それを閉じ、さらに一歩踏み出して考える。
そこに、あなたの哲学がはじまります。
私にとっての哲学、さて、あなたにとっては?
躁うつの発症、この出来事が私の人生を大きく変えました。フランス留学を終え、フランス語の翻訳を仕事にしていた私は、周囲から見ても、順調なキャリアを築いていたでしょう。しかし、うつの症状がひどくなり、私は自分で天職とまで思っていた翻訳の仕事を辞めざるをえなくなりました。
絶望の中、療養のため一人寝ているとき、心も体も動かないながらも、私はふと浮かぶ哲学の問いを考えてみたり、何となく手を伸ばした哲学書をめくったりしてみました。すると、人間や世界について、知らないことが実に多いということに私は改めて気づきます。
人間や世界についての不思議、
つまり神秘が
きらきらときらめいて私の目に映りました。
「きれいだな」と思うと同時に、ひとたび不思議だと思うと、人間とはその不思議のなぜを知りたくなるのですね。私は、そうやって考え続けることによって、今まで生きてこられたように思います。
その意味で、
私にとって哲学とは「救い」なのです。
さて、あなたにとっての哲学とは何でしょうか?
これからたくさん読み、学び、一緒に考えていきましょう。
最後に、本書が私と同じように哲学を必要としているあなたの手もとに届くことを願っています。
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